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人生五里霧中

エヴァTV版見直し-第伍話『レイ、心のむこうに』-綾波のビンタ

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前回:エヴァTV版見直し-第四話『雨、逃げ出した後』-コミュニケーションが成立する瞬間 - えのログ

シンジとミサトさんのドラマが一段落したのもあって綾波にスポットがあたる回。

前回までの流れを踏んでだいぶシンジと周囲の関係が変化しているのが印象深い。

今更だが、ネタバレは当然のようにあるしEOE(旧劇と普段書いていたがテレビ版を語るにあたって違和感がでてきた)、新劇場版等を時に踏まえて感想は出力しているのでまだ触れていないものがある人は気をつけてほしい。

あと、あくまで個人の解釈です。

 

綾波を助けるゲンドウ

見直すたびに思うのだが、零号機の実験失敗時や、序盤の綾波へのゲンドウの距離感がいまいちスッキリしていないところがある。

最初は「ああ、ゲンドウは綾波に対して優しいのか」と思っていたがEOE時点では妙にドライというか計画遂行のための道具ぐらいに見ているような感触がある。というか序盤であっても1話で綾波を初号機に乗せようとしたり、整合性を保った上で作劇が行われている序盤から距離感が変だ。*1

序盤の距離感が補完計画のためだけに打算的に綾波に優しくするほどゲンドウがコミュニケーション能力があるタイプには見えない(主観)ので幾つかの要因が絡み合っているように思える。

「ユイの面影に引っ張られた」「ゲンドウ自身、綾波への距離感がつかめてなかった」「零号機実験時では綾波に死なれては困る(補完計画に支障が出る)」「序盤から終盤まで一貫して綾波へ一定の好意はあるが終盤は計画遂行のために抑えている」「二人目の綾波は付き合いが長いので大切(EOEでは3人目なのでドライ)」

とか色々思い浮かぶが、せっかく見直しているのでゲンドウからの綾波への距離感も意識的に追っていきたい。

 

 綾波の心情も追いにくいが、第6話でシンジがエントリープラグへ助けにきた時に重ねているように、ゲンドウに助けられたことは綾波の中で相当印象的な出来事だったことが伺える。

ここを出発点に5〜6話で描かれる綾波の心情が作られているように見える。

 

ゲンドウのメガネが落ちて熱で歪み壊れる。

このメガネもEOEにかけて綾波綾波とする一つのポイントだと思う。

 

・零号機の暴走理由

リツコが「まさか……」みたいな意味深な触れ方をしているが、正直ここらへんはライブ感で伏線を作ったもののうっちゃられた部分なように思える。

綾波がシンクロした際に零号機の中身(これがなんだかぼやけているが)を通じて自分のルーツを直感的に理解して動揺→シンクロが乱れて暴走といったところだろうか。(Qの自分のルーツに綾波が動揺していたように)

 

・殺人事件の現場のようにチョークで描かれたエヴァの落下箇所

なんかシュールで笑える。

 

使徒のコアについて解析するリツコ、ミサト、シンジ

リツコの後ろでリツコに合わせて同じタイミングで飲み物を飲むミサトさんとシンジが可愛い。

4話で打ち解けたのもあって全体的に5話はシンジの周囲との関わりが軟化していて微笑ましい。

シンジがゲンドウのやけどを気にしている様子もミサトさんが見抜くし。

 

 ・シンジ「どうしてあいつ(綾波)、いつも一人なんだろうって思ってさ」

 これが友人のできた人間の余裕ですよ!自分だって一人だったくせに!!!あーもうチョームカツクー!(惣流・アスカ・ラングレー並感)

いや実際全然イラついていないが、トウジとケンスケと打ち解けた雰囲気で綾波の様子を見ながら言うシンジに思わず笑ってしまった。

4話で仲良くなっただけあってセンセ呼ばわりで「綾波のむね!綾波のふともも!綾波のふくらはぎ!」なんてしょーもない会話に巻き込まれている様子も微笑ましい。本来14歳の少年だもんなあシンジ。

 

・シンジの見る、零号機の前で話す綾波とゲンドウ

 綾波もゲンドウも全体のテンションから浮くぐらいにこやかに話している様子で笑う。誰だよ。

綾波にしてもゲンドウにしても序盤のテンション自体から乖離したにこやかさなので、シンジ目線で誇張された描写ぐらいに考えても良い気がする。

ただシンジから見て「同じパイロットという立場」 で「ゲンドウから認められている」という存在に綾波がいるって気づく、という意味合いはあると思う。

 

・カレーを食べるリツコ、ミサト、シンジ

「なぁによこれぇ…」とミサトさんたちの食生活に引き気味のリッちゃんが可愛い。

全体的にトーンが明るく「レトルトを原料に…よくここまで……!」とドン引きする描写もギャグになってて面白い。今同じシーンやったら「レトルトでこんな…ありえないわ……!」とか言い出しそうだ。

この時期のミサトさんとリツコはすごく仲が良さそう。後半のジトジト感は遊びに行く仲とは思えないが。

シンジとミサトさんの距離感がだいぶ近づいているのも微笑ましい。

「シンちゃん、もう一本お願い」とビールを頼むミサトさんや「違うよお!」って綾波を気にしてることをからかわれて反応するシンジなど、4話を経て距離感が変わったのを感じる。この時期はたしかに積み重ねが行われているんだよね。

 

綾波について「いい子よとても、あなたのお父さんに似て、とても不器用だけど」「不器用って、何がですか」「生きることが」

 このあたりでゲンドウが不器用ということをポロっとリツコが言うあたり愛人設定は初期からあったんだろうか。

綾波が生きることについて不器用、というのは綾波の設定とかと絡んでのことかと若干

 流してしまっていたというより雰囲気で見てしまっていたが、6話とセットで考えていくと案外綾波エヴァに乗ることについてこの時点でシンジが思うほど淡々と乗っているわけではないあたりに"不器用"という表現が来るのではないかと思った。

これについてはまた後に書いていく。

 

 ・綾波の家へ行くシンジ、ゲンドウのメガネ、ラッキースケベ

このあたりは毎回見るたびに恥ずかしくなってしまうのだが、情報量が多い。(ラッキースケベ系のシーンはどのアニメでも見ていて恥ずかしくなる)

無機質な部屋に、薬を常飲している様子など、今につながる綾波のイメージを補強する描写が多い。

ゲンドウのメガネは二人目の綾波綾波足らしめる要素として大きい。EOEでは破壊するわけだし、三人目が。

ラッキースケベ後に手をニギニギしていたりと生々しい。

 

綾波のビンタ

「あなた、碇司令の子供でしょ」「うん」「信じられないの、お父さんの仕事が」「当たり前だよ、あんな父親なんて!」「……」 ⊂彡☆))Д´)パーン

 

この一連の流れについて、命を救ってくれたゲンドウの悪口を言われたから綾波が怒ったぐらいに思っていたのだけど今回改めて6話とセットで見て印象が変わった。

ゲンドウをシンジが貶したから、というのは一因だと思うが、後のアスカからの煽りを比較的スルーしていた綾波にしては妙に沸点が低い。もっと複数の要因があってビンタに結びついているように思う。

綾波はなぜこれに乗るの?」

「絆だから」

「絆?」

「そう、絆」

 「父さんとの?」

「みんなとの」

「強いんだな、綾波は」

「私には、他に何もないもの」

TV版エヴァ6話より

6話での「あなたは死なないわ、私が守るもの」に続く会話だが、ここでいう"私には"は「あなた(シンジ)と違って私には、他に何もないもの」ぐらいのニュアンスがあるんじゃないかと思うとこのビンタの意図がトレースしやすくなった。

シンジがゲンドウに必要とされる、ゲンドウと向き合っていくために「逃げちゃダメだ」とエヴァに乗るように、綾波もまた周囲の人間との絆のためにエヴァに乗っているのだ。

リツコの言っている生き方が不器用、というのはそういう在り方を示しているのではないかと思う。綾波も人とのコミュニケーションの中で居場所を作るのではなく、エヴァに乗ることでしか居場所を作れていないのだ。

 

この時の綾波からすれば、シンジはエヴァパイロットである前にゲンドウの息子なのだ。パイロットとしてゲンドウや周囲の人に関わる以前に、それがどれだけシンジにとって薄いものであってもゲンドウとシンジにはそういったつながり(絆)がある。

そういった考えでこの一連のシーンを見た時、そんな綾波エヴァに乗るスタンスを「ねえ、綾波は怖くないの?」「当たり前だよ、あんな父親なんて!」というシンジがいうのは綾波から見れば傲慢に映ったんじゃないかと思った。

エヴァに乗ろうと乗るまいと、ゲンドウの息子であるシンジと違い、綾波は"エヴァパイロットだから"ゲンドウとのつながりがある。ゲンドウが綾波を気にかけていようがそれはエヴァパイロットとしてだ。*2

エヴァに乗らないと人に関われないのはシンジだけでなく綾波もまたそうなのだ。

そんな綾波のスタンスを「あんな父親なんて」と軽々しく言い、エヴァに乗ることを怖がれるシンジは綾波から見ると"持っている人間"だ、(シンジがどう感じているかは別として)エヴァに乗るか、乗らないか選べるのだから。

だから、そのシンジの意図していない傲慢さが、ビンタにつながっているんじゃないかと。

 

また、シンジの意図していない傲慢さとして見ていくと「どうしてあいつ(綾波)、いつも一人なんだろうって思ってさ」という言葉もまた、持っている人間の無自覚な傲慢さとして設定されたセリフのように思えてくる。味わい深い。

 

・プラグスーツに着替える綾波の笑顔

リツコのゲンドウが綾波を助けた時の説明を重ねながら綾波の笑顔を写すあたり、上記の解釈は割と通るんじゃないかと思う。プラグスーツに着替えて、エヴァパイロットとしての自分を規定する時、綾波は周囲とのつながりをより感じることができるのではないかと。

 

・零号機再起動成功、安堵する綾波のため息を示すLCLに浮かぶ泡

これも同じく。

 

・第5の使徒、上陸

 エヴァが地上に出た瞬間ビーム撃ってたりと、しょっぱなから殺意がフルスロットルで面白い。

 

・「ダメ!避けて!」

相変わらずミサトさんの「避けて」は手遅れなタイミングすぎてどうしようもない。

ハラハラする突然の展開のテンションを高めたまま次回!

 

綾波についてそこまで思うところはないつもりだったが、想像以上にこれまで以上にモリモリ文章を書いてしまった。改めて見ると色々感情の流れを感じることができるので面白い。

 

・次回

次回は第六話『決戦、第三新東京市』みんな大好きヤシマ作戦だよ!

 

 

*1:シンジを初号機に乗せるためのブラフの可能性はあるがそれで綾波の傷開いたりしてるし

*2:実際のゲンドウの思惑はそれだけではないのだろうが、この時の綾波視点ではそうだと解釈した