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エヴァTV版見直し-第六話『決戦、第三新東京市』-「笑えばいいと思うよ」シンジはなぜ泣いたのか

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前回:エヴァTV版見直し-第伍話『レイ、心のむこうに』-綾波のビンタ - えのログ

エヴァ序盤戦の山場の一つ。かなり人気のエピソードであろう六話。

決戦までのテンションの高め方や決戦時の緊張感、シンジと綾波のエピソードとしても締まっているというエヴァのエンタメ的なエッセンスが凝縮されている回だ。

 

・瀕死になるシンジ

開幕コア狙いという使徒からの圧倒的な殺意の高さに震える。

それまで二話などで意識を失うなどの展開はあったが、ここまでダイレクトにシンジが苦痛で絶叫し、そのまま死にかける様子が描写されるのはそれまでの回では無かったのもあり、ただ事でないのが伝わって来る。シンジの絶叫も壮絶さがすごい。

心配蘇生や鼻血の描写など、徹底した緊迫感の演出が見事。

 

・戦力分析→作戦立案→決戦準備

デーンデーンデーンデーンドンドンッ!デーンデーンデーンデーンドンッ!

バルーンダミー、自走臼砲による戦力調査で使徒の攻撃力や堅牢さを認識させておなじみのBGMでミサトさんたちネルフでの状況把握の会話に流れ込んでいくのがスピーディーで最高なテンポの良さ。

シン・ゴジラでもテンポの良い会話劇や、作戦がリズミカルに組み上がっていく様子等が面白さの一因であると思うのだけど、その魅力のコアとなる原型はエヴァ六話で既に完成していたように思える。 

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ

 

戦略自衛隊技術研究所から試作自走陽電子砲を徴発するのを宣言して零号機でそのっま持って行くところや、「それだけの大電力をどこから集めてくるんですか?」「決まってるじゃない、日本中よ(はぁと」といった会話など冷静に見ると「んなアホなwwww」とツッコミを入れてしまうところを怒涛の格好の良い単語の連発やテンポの良い会話、BGMであれよあれよと心地よくハッタリに乗せていく。

不勉強なので知らないのだけど、このような会話のテンポで話を転がしていく作劇は何か元ネタ的なものはあるんでしょうか?何かネタ元みたいなものがあればコメントとかで教えていただけると、気になるので……

 

それまで「シンジくん避けて!」などの無茶振りムーブばかり印象に残っていたミサトさんが作戦立案をしているというところもあり、作戦立案者としてのミサトさんの能力のアピールにもなっていて無駄がない。

 

 ・目覚めるシンジ、エヴァに乗るのを嫌がるシンジ。

綾波に乗りたくないと愚痴りまくるシンジ。ネガティブモード全開である。

4話でネルフへ残ることを選択した後なのに「また嫌がるのか」 と感じる人も多いかもしれないが(このブログでの解釈としては)4話ではあくまで「自分の辛さを理解してくれている人がいる、応援してくれる人がいる」と気づいた、知ることができたから残ることを選択しただけでエヴァに乗る恐怖やプレッシャー自体が解消されたわけではない。

実際死にかけたのもあってここでうじうじするのはまあ仕方がないんじゃないかという気持ちになる。

とはいえ、「いやだ…綾波はまだあれに乗って怖い目にあったことがないからそんなことが言えるんだ……」なんて愚痴るのは零号機で事故っている綾波*1からしたら(うっざいなあコイツ)ぐらい思っても仕方ないのでまた⊂彡☆))Д´)パーン とならないだけ綾波も優しい。

 

 ・「じゃあ寝てたら、初号機には私が乗る。赤木博士が初号機のパーソナルデータの書き換えの用意、しているわ」

シンジのぼやきに対しての綾波なりの言葉の応酬に見える。

直前にリツコも「でも彼、もう一度乗るかしら」と言っているもののヤシマ作戦自体二機のエヴァで運用する作戦なので、可能な限りシンジの作戦参加の線は残したいはずだ。緊急時の備えとして書き換えの準備はしているものの綾波の言葉のニュアンスのように「嫌ですか、じゃあいいわレイにやってもらうから」とまではいかない気がする。

案外、綾波もこの時のシンジに対して(#^ω^)ビキビキって感じだったかもしれない。ビンタの後から特別やりとりはなかったし。

エヴァはどうもこういう「"自分は代替不可能"という驕り」みたいなものに手厳しい。「自分しかダメなんだ」みたいな考えには愚痴だろうが、侮りだろうが徹底して作劇上潰しにかかっている。これからも同じようなやりとりは頻出するので追っていきたい。

 

エヴァを応援するトウジとケンスケ

「すっげえ!」というリアクションに緊迫感はないものの、素直にシンジたちを応援してくれる人がいるというのもわかるのでぽかぽかしますね。

 

・「陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受け直進しません。その誤差を修正するのを忘れないでね」→「テキスト通りにやって最後に真ん中のマークがそろったらスイッチを押せばいいの、後は機械がやってくれるわ」

毎回思うのだけど、じゃあ「誤差を修正しろ」なんて言わないでいいのでは?なんて揚げ足を取りたくなってしまう。

この説明パート自体テンションを高めてくれるので格好良くていいけど。

 

・「これで、死ぬかもしれないね」とか言い出すシンジ、「あなたは死なないわ、私が守るもの」

作戦開始前から士気を下げるようなことを平然と言い出すコミュ障っぷりにウキウキしてしまう。そりゃ綾波も「どうしてそういうこと言うの」とか突っ込むわ。シンジ、ファフナーだったら「どうせみんないなくなる」とか書いちゃうタイプ。

 

「あなたは死なないわ、私が守るもの」は有名セリフだが、どうもこうやってみるとセリフが一人歩きしているような印象がある。

セリフ単独での印象としては「お前のことは守ってやるから安心しろ」ぐらいの印象があるが、一連の流れで見ると「先に死んじまうのは盾役の私だからな、それぐらい理解しろよ」ぐらいのたしなめるニュアンスを感じる。この後のエヴァに乗る理由を話すあたりで「絆だから」と言い切るあたり、この時点で綾波綾波のロジックでシンジ以上に明確に自分の意思でエヴァに搭乗している感がある。

アスカ登場回でアスカが弐号機で出撃する前に「アスカ、行くわよ」と呟くように綾波にも綾波なりにエヴァに乗るバックボーンを5話と6話で直接的な言葉以外でも示している気がする。

 

・「絆だから」という綾波エヴァに乗るスタンス

綾波はなぜこれに乗るの?」

「絆だから」

「絆?」

「そう、絆」

 「父さんとの?」

「みんなとの」

「強いんだな、綾波は」

「私には、他に何もないもの」

「他に何もないって……」

「時間よ、いきましょ……さよなら」

こうやってセリフを引用してみると5話でシンジが綾波とゲンドウの会話する様子ほど、ゲンドウの指示だけでエヴァに乗っているわけではないように思う。

ゲンドウとの絆だけでなく、ゲンドウを含んだ他者との絆のためにエヴァに乗っている、エヴァに乗る自分には、他に何もないと言っているのだ。

これは逆に言えば、エヴァに乗らないとそれも存在しないということだ。

他者とのつながりのために乗る、というのは「(エヴァに乗らない)僕はいらない人間なんだ」と言った一話のシンジと強烈に重なる。エヴァに乗る動機はシンジと綾波の「他者との関わり」という意味でほぼ同一なのだ。(ほぼ、と書いたのは初期のシンジは「ゲンドウと向き合うため」という色が強いため。)

シンジと違うのは綾波はその点についてあっさりとしているというか、そうであることを受け入れてエヴァパイロットに臨んでいる節があることだ。

シンジのように「エヴァに乗らない僕に価値は……」という風に悩むのではなく綾波は「エヴァに乗らないと価値がない、乗ると価値がある、だから乗る。以上」ぐらいの割り切った考えがセリフから見える。

  

ヤシマ作戦、開始

BGMもあってテンションを高めていくのがうまい。

庵野監督はヤマトの波動砲の発射のセリフを暗記していたらしいし、そういったものがポジトロンライフル発射までのセリフに生きている気がする。

 

・「自分には自分には他に何もないってそんなこと言うなよ、別れ際にさよならなんて悲しいこというなよ」シンジはなぜ泣いたのか、綾波の笑顔

ここからの「笑えばいいと思うよ」→綾波の笑顔といった一連のシーンは序盤の名シーンと言えるだろう。

シンジが泣いたのは正直、これまで見ていた時は「綾波が助かって泣いたんだろう、なんか熱いシチュエーションだし」ぐらいに思ってアニメーションの勢いで納得していたのだが、改めて綾波エヴァに乗るスタンスを一つ一つ追っていくと、シンジにもただ綾波が助かって良かったから以上の泣く理屈があるように思えた。

前述したが、シンジと綾波エヴァに乗る動機には「他者との関わり」がある。だが、そのことにシンジは5話時点では気づいていなかっただろう。

シンジがそれを知るのはヤシマ作戦開始直前の「さよなら」で打ち切られた会話だ。

シンジはこの時の会話で綾波が「同じエヴァパイロット」というだけでなく「同じ動機でエヴァに乗る人間」と初めて理解したんじゃないだろうか。そして同時に「他になにもない」という綾波の言葉は割り切りすぎた悲しい言葉だ、シンジはそれを割り切れない狭間にいるのだから。

だからこそ、ほとんど衝動的に綾波を助けたであろうシンジも、同じ「エヴァに乗らないと価値がない」と言える綾波を助けることを通じて、綾波と同じ自分を救えたように感じた、もしくは救われたいと願ったんじゃないだろうか。

それまでシンジにとって理解の外の異物であった綾波がその実自分と同じだったと気づくことと、その存在を助ける(助けられた)からシンジは泣いたんじゃないだろうか。

 

また、このような視点の変化は綾波にも同様にある。

上記のようなシンジの心の流れは綾波の理解するところではないが、「笑えばいいとおもうよ」というシンジの言葉と泣き笑いの顔でゲンドウの笑顔がフラッシュバックする。

前回の感想でも書いたのを引用すると

そんな綾波のスタンスを「あんな父親なんて」と軽々しく言い、エヴァに乗ることを怖がれるシンジは綾波から見ると"持っている人間"だ、(シンジがどう感じているかは別として)エヴァに乗るか、乗らないか選べるのだから。

だから、そのシンジの意図していない傲慢さが、ビンタにつながっているんじゃないかと。

綾波にとってもまたシンジは異物だったはずだ。

だが、ゲンドウから助けられた時の笑顔とシンジの笑顔が重なり、異物ではなくシンジもまた綾波の言う「みんなとの絆」のうちの一人だったと認識したのだとおもう。

だからこその、心を許しての笑顔なのだと思う。ここでゲンドウの笑顔がフラッシュバックするのはゲンドウが綾波のいう「みんなとの絆」の代表としての存在だからだろう。(余談だが、このシーンをただシンジとゲンドウを重ねただけ、と読むのなら上のほうで引用した決戦直前のセリフ「みんなとの(絆)」とシンジには答えないだろうと思う)

 

このシーンはシト新生や序など何回も描き直されているシーンだが、どれもテレビ版よりも抑えた笑顔になっているので心を許した=表情を緩めた、といったニュアンスの笑顔な気がする。(キャプが取れないので各自脳内再生か見直してみてください……)

テレビ版の笑顔も素朴で良い。

 

笑顔を見せる綾波、月が写って「つづく」

 

いやあ本当に良い回だ。

 

・次回

次回はジェットアローン回!ジェットアローンは最高に好きだ、Qでエヴァに乗ったら死ぬとか言った時「ついにジェットアローンの出番か……!!」って思ったくらいには好きだ。

というわけで、つづく!

 

次回:エヴァTV版見直し-第七話『人の造りしもの』- - えのログ

*1:使徒との戦闘という意味でシンジは言っているんだろうけど