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人生五里霧中

エヴァTV版見直し-第四話『雨、逃げ出した後』-コミュニケーションが成立する瞬間

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前回:エヴァTV版見直し-第参話『鳴らない、電話』-"あてつけ"としての使徒への突撃 - えのログ

第四話。過去に別のブログでエヴァの感想を書こうとした時は三話で挫折したのでYOU CAN (NOT) ADVANCEといった感じだ。

改めて見ると1〜2話がセットのように2〜4話もセットのように思える。

シンジとミサトさん、シンジとトウジ、ケンスケのコミュニケーションが成立する回だ。

 

・家出に気づくミサト

「シンジくーん、おきなさーい。いつまで学校休む気?もう五日目よ。初号機はもう完全に直ってるのよ。パイロットのあなたがそんなんでどうするの?」

ただでさえパイロットのモチベーションが低いシンジへ、後で出てくる使徒撃退後のシンジへの説教後にこれは不登校の生徒にクラスからの寄せ書きを送りつけるようなミスチョイスの言葉な気がするんだけど、どうだろう。

 

・訪ねてくるトウジとケンスケ

またもすれ違い。ここで訪ねてくるのは3話での電話がつながらない、ディスコミュニケーションの描写だけでなくて今回ひとまず解決するシンジとミサト、シンジとトウジ・ケンスケのドラマのラインを重ねるためというのもあるんだろう。

 

・シンジのバカ!ゲシィ!

ミサトさんの理不尽な暴力が扉を襲う!

ジェットアローン回でもだけどミサトさん、物に当たるよね。

庵野監督もスタジオなどで相当暴れていたらしいのでそういうところを反映させたのか。

 

・S-DATの25〜26トラック繰り返し。

これは新劇場版でも使われてるのでこの回で出ていたことを忘れないためにメモ。

 

・映画館でも居場所がないシンジ

カップルのいちゃつきみて不快そうな顔して映画館でちゃうのが悲しすぎる(ちょっと面白いけど)。いま夢の国とか押し込んだらシンジ死ぬんじゃないか。

 

・シンジ家出の旅

あちこち変な場所にいったり、尖った色彩に画面がなるものだから凄い不安定な気持ちになる。追い詰めるザワザワした描写に気合が入りすぎているのでBパートのまとめ方の綺麗さとのギャップが凄い。

 

・作戦終了後適当な返事をするシンジ

シャムシェル戦後の回想。作戦中の独断行動の突撃を詰められるシンジ。

この時のシンジの受け答えも三話と同じような当てつけ感がある。

「褒められるもなにも、どうせ僕しか乗れないんでしょ。乗りますよ」

のあたりは露骨だけど、シンジの意図とミサトさんの受け取り方で事故っている気がする。

 

シンジの心情としてはエヴァに乗るのが辛い」「逃げちゃダメだ」「でもクラスメイトに殴られたりする」「こんな僕のつらさわかってよ!認めてよ!」といったあたりで自分を理解してもらいたいという心情が先立っている気がする。

ミサトさんはそれに対して"エヴァパイロット"としての叱り方をしてしまっていて、かつ「戻らないならその方がいいかも」と距離を取る受け取り方を取ろうとしてしまっている。

シンジが距離の詰め方がド下手ならミサトさんも14歳に対して受け取り方がことごとくNGな方向になっていてつらい。ヤマアラシのジレンマ。

 

アイキャッチ

Hedgehog' Dilemma

 

・ケンスケと出会ってキャンプするシンジ

ケンスケからトウジが妹に叱られた話を聞いたりと、トウジの状況をシンジが理解できる会話があったりと、トウジと和解する話の積み重ねが丁寧。4話は綺麗にまとめようと丁寧に積み重ねがあるんだね。

 

・「やめた方がいいよ。お母さんが心配するから」「それなら大丈夫、俺そういうのいないから。碇と一緒だよ」

このセリフ、シンジからしてみればまた当てつけのようなものだったんだと思う。「自分はそんな心配されるようなことをやらされてるんだ、お前たちと違うんだ」みたいなひねくれた感じ。

でもそんなひねくれを直球で受け止められて、(自分と違って)お気楽だと思っていたクラスメイトが自分と同じ背景を持っていることを知らされる。

周囲の無理解に対しての嫌味ぐらいの気持ちだったのにそれを率直に受け取られて、心を開かれるのは結構自分の浅ましさみたいなものでダメージ受けるんじゃないだろうか。シンジの表情もハッとした感じに描かれているし。

 

・連れ戻されるシンジ、ミサトとの会話

ミサトさんへの当てつけを完全に外す場面というか、「家出したことをしかってよ、心配してよ」「僕の辛さわかってよ」「そんな僕を理解してよ!」みたいな感じがビンビンしている。待遇の改善ではなくて自分の立ち位置とか心情をまず理解してほしいって要求なんだと思う。なんて面倒くさい拗ね方なんだ、シンジ。

ミサトさんはそれで「そんなにつらいならやめた方がいい」という思考になっているからもうディスコミュニケーションなんだよね。

でも「あんたみたいな気持ちで乗られるの…迷惑よ!」ってあたりは自分がシンジを道具として利用している、エヴァに乗らせないといけないって罪悪感もあってキレてる感じがする。

 

・NERVを追い出されるシンジ

リツコの反応的にはシンジがいないのはやっぱ痛いんだろうなあって感じ。

ここらへんのミサトさんは心情的に見てて追いやすいんだけどゲンドウは本当にわかんないな、シナリオ的に意図を読ませないキャラにしておく必要があったからしょうがないんだろうけど。

劇場版で最終的に「すまなかったな、シンジ」バクー!に至るあたり、ミサトさんと同じように「つらいんだったら追い出してやった方がいい」ぐらいの思考だったんだろうか。

 

ここでお別れの言葉をミサトに言おうとするあたり、やっぱりかまってほしいって気持ちがあるんだろうかね、シンジ。

 

・見送りにくるトウジとケンスケ

「わしのこともどついてくれ!」と一直線に向かってくるトウジ、シンジが去ってしまうのは仕方ない、それだけ大変なことをやっている、悪くいうやつは殴ってやる、いった趣旨のトウジの言葉を聞いて目に輝きが宿っていく。

シンジが3〜4話でずっと求めていた「理解」をしてもらえた瞬間なんだと思う。そして同時に「殴ってすまんかった」とシンジみたいな婉曲的なやり方でない一直線のコミュニケーションを行われる。

四話のトウジとケンスケ、すごくストレートなコミュニケーションをするんだよね。シンジがひねくれているだけに余計にそう見える。

 

・「殴られなきゃならないのは僕だ!僕は卑怯で、臆病で、ずるくて、弱虫で……」

このシーンが四話で好きすぎる。トウジとケンスケとのコミュニケーションを経て、当てつけのような形でしか自分の気持ちを伝えようとしなかった、相手と向き合ってこなかったということへの反省なんだと思う。

トウジとケンスケに理解してもらえて、かつまっすぐな言葉をかけられて自分の矮小さを自覚したというか。

 

・「ヤマアラシのジレンマか…身をよせるほど相手を傷つける、こういうことか……あの子、ああいう言い方でしか自分の気持ちを伝えられないんだわ」

シンジの当てつけの意図、ようやく届く。

この後ミサトさんが駅まで来てくれるあたりが断絶が少し解消できた感じで気持ちがいい。四話は使徒が登場しないだけに、ドラマ面の力のいれ方がすごい。

 

・「頑張ってね」二話のリフレイン

ミサトさんに当てつけの意図がようやく届いたとほぼ同時に、シンジにも二話のミサトの言葉がようやく届くというのが素晴らしい。

トウジやケンスケに自分のことを理解してもらえていたこと、自分の矮小さを自覚して、初めてミサトさんもまた理解者の一人だったんだと感じることができたんだろう。*1

二話から積み重ねたものが結実するんだね四話で。

 

 ・電車がいってしまった→見送るミサト→ミサトが色々な感情が巡っている中後ろにシンジがちらりと映る→振り返って気づくミサト、シンジ→「ただいま」「おかえりなさい」

このくだりの間の取り方が贅沢で本当に良い。

明確にシンジとミサトのコミュニケーションが成立したというのが、シンプルなやりとりで表されるというのも含めて過不足がなく綺麗に収まっている。

もうここで完結でいいよ。

ここまではだいぶシンジとミサトのドラマって感じで丁寧に作られていたんだなと改めて実感。いやあ面白い。

 

・次回

次回は第伍話『レイ、心のむこうに』

ようやく綾波回。改めてみると意外と綾波にスポットが当たるのってゆっくりなんだなあ。

 

 次回:エヴァTV版見直し-第伍話『レイ、心のむこうに』-綾波のビンタ - えのログ

*1:いや、これからさらにまたミサトさんとのディスコミュニケーションはあるんだけど少なくとも2〜4話で、という意味で