えのログ

人生五里霧中

AC/DCの『Back In Black』で自分のつまらない世界に風穴が空いた頃の話

 

Back in Black (Dlx)

Back in Black (Dlx)

 

 

Back In Black

Back In Black

  • provided courtesy of iTunes

 

ふとTwitterでフォロワーさんがAC/DCを聴いているとツイートしていて懐かしくなったので聴き直している。

AC/DCについて特別詳しくもなく音楽評をかけるわけでもないのでアルバム『Back In Black』についてその周辺の自分語りでもしていこうと思う。

 

そもそも僕が音楽をそれなりに真剣に聞き出したのはたしか高校生の時だった。
ポルノグラフィティぐらいしか聞いていなかったのに、島村楽器でクソ安い初心者セットみたいのでレスポールを買い、なんとなくギターに触れていて、それで音楽を聴くという逆転した音楽の触れ方をしていた時期だった。
安物はひどいものでギターを買ったのに、めちゃくちゃ配線がぶちギレるのでギターを買った結果、上手くなったのは切れた配線を直すためのハンダコテの技術とかいうわけわからんことになっていた。ギターは上手くならなかった。
 
当時ROCK FUJIYAMAという番組がやっていた。ROCK FUJIYAMA - Wikipedia
マーティ・フリードマンとかROLLYがメインでやっていた音楽番組なのだけど番組中でギターをバンバン弾いたり、色々なHR/HMの曲を紹介してた気がする。(いやめっちゃうろ覚えなのだけど)
 
それを見た高校生のえのきにとってはHR/HMってマジで色々なもんをぶっ壊してくれる衝撃があったんですよね。それこそヒットチャート上位の曲ってなんかピンとこないし(ポルノグラフィティは好きだったけど)、ルサンチマン拗らせまくっていたので『世界に一つだけの花』とか「何が花だよそれでも俺はその花が咲く前に踏みにじられる花ですらない何かだよ」みたいにイラついてたんですよ、超理不尽だな。いや、今はそこまで殺意を世界に持っていないけど、殺意すら失ってしまったのかもしれないけど。
 
 
そんな時にAC/DCのPVだかライブシーンの映像をセットでそのROCK FUJIYAMAという番組で紹介されていた。
 
衝撃。
なんか短パンでクソダセー格好のおっさんがSGギター抱えてめちゃくちゃカッコイイリフをかき鳴らしてるの。ガンガンに重厚でカッコイイサウンドからは想像できないクソダサいオッサンが画面で暴れていた。
 
マジ衝撃。
クラスの中心的人物が「俺ギター(orベース)始めたんだぜ〜」とかいって教則本のクソ簡単なクロマチックスケールとかメジャースケール弾くのを、当時ギターかじっていた僕は
 (クソ、そんなん買ったその日でできるだろ、できるうちに入らねえよ死ね!もっと趣味を大切にしろよ俺はお前らなんかと違うぞ)
 ってめちゃくちゃルサンチマンフルスロットルでそんなんだからそういう人間が「これマジいけてる」みたいなノリで聞いてるメロコア系とかロキノン系も
「もてたいやつが学祭で音のバランスも音作りもめちゃくちゃで挙句ボーカルがろくに聞こえないノイズを垂れ流す様に消費されるだけの音楽、もはや音楽ではない、こいつらは音楽を冒涜している。そんなものを好む奴らは世界が曇っている。そいつらが楽しめるこの世界はクソ。この世界にもはや音楽は存在しないのだ。世界はクソ」みたいな偏見120%でゲロゲロゲローみたいになってたんだけど、そもそもえのき語れるほど音楽聞いてねえだろってそんな僕の偏見だらけの音楽観がぶっ壊れる衝撃。*1
 
だせえオッサンがクソかっこいいリフをかき鳴らすとだせえオッサンは世界で一番カッコイイオッサンになる。
 
これがロックか!
 
視野狭窄極まりないんだけど、そんな感じで「HR/HMは神」みたいな思考がインストールされることになり僕はAC/DCを聴くことにする。
当時はインターネット環境もロクになかったのだけどテレビで見たAC/DCという名前をなんとかメモり、ガラケーでカチカチ検索して「へえBack In Blackとかいうのがかっこいいんだな」と知りTSUTAYAへ行く。
 
それまでの音楽観が全く変わる経験というのがあって、AC/DCはそのうちの一つだったように思う。
歌詞もわからねえ、カラオケで歌おうとも思わねえメロディラインだったけれど、ひたすらにリフとギターソロが最高でアルバムをMDに入れて授業もロクに聞かずに寝たふりしながら学ランの内側にイヤホン通して授業サボって聴きまくっていた。
「クラスの耳がバカなやつらが知らない世界の音楽、すなわち”真理”を聴いている俺。俺は世界の価値がわかる人間、つまんねえ有象無象のモブクラスメイト、すなわちモブメイトとは違う、おわかりか? Do you understand?というやつに120%ベロベロに酔って聴いていた。もう死ねよ高校時代のえのき。
でもそれだけのめりこめる感覚というのは今となっては中々味わえないもので、『AC/DCを聴いている』というだけでどこか自分が特別な人間に成れた気がしたし、テレビで評価されているものが自分にとって“つまらないもの”だった世界に風穴が空いたような気がした。
世の中で評価されているものはすべて“つまらない”ものなんかではなくて、こんなに“素晴らしいもの”と自分が感じるものが世界で評価されているという事実が鬱屈とした10代をかろうじて救ってくれたような気がした。
世界はつまらなくなんかない。
いや、マジで大げさだろ、って今振り返ると思うんだけど、当時の感覚を言語化すると本当にこんな感じだった。一つのコンテンツが本当に世界とリンクしていたんですよね、十代の時って。こんな懐古する自体が歳とったって感じでウギャーって感じなんですが。
 
申し訳程度にアルバムについて触れていくとしょっぱなの鐘の音から始まる1曲目のHells Bellsはその荘厳さで当時の厨二心をがっちりキャッチしてくれたし、2曲目のShoot to Thrillはそのテンポとリフのキレの良さで「これがロックだ(ドヤ顔)」みたいにさせてくれた。
6曲目のアルバムタイトルにもなっているBack In Blackはリフからギターソロまで何もかもが印象的でギターでコピーもかなりやった。もうここ数年まともにギター触ってないので今は絶対弾けないが。
 
当時はTSUTAYAが、“つまんないわかってない”奴らしかいない近所から世界への扉だったのだけど、今はApplemusicとかで簡単に聴けるので最高に良い時代だな、と思う。
HR/HMを漁る流れで筋肉少女帯とか聖飢魔IIに行き着き、えのきの十代の頃のルサンチマンは究極的に痛い方向に進化していくのだけどそれはまた別の話で。
 
意外とアルバム単位でブログを書くのも楽しいなと思った。どうしようもなく痛い過去にメスを入れるのは痛いのだけど、そんな思い出のあるアルバムなのでまあよかったら聞いてみてください。
 

*1:こんなこと書いてるけどアジカンとかは今でもたまに聴いたりするのでマジで一貫性がなかった。今もないですが……