えのログ

人生五里霧中

十文字青『ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜』読んだ。

 

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

 

 

前回の『萌神』に引き続き「面白かったから貸してやるよ、お前にぴったりだぞ」みたいなノリで貸してもらったので読んだ。
『萌神』よりは文体が肌に合っていたのかサクサク読めた。

 

ざっくりとしたあらすじは、主人公のユラキはブラコン気味の妹と生活していて、そんなある日気になるクラスメイトの桃川みうのアドレスを友人から聞いて、連絡してみたところどんどん距離が近づいていく。
そんな時に元天才美少女で、家をずっと開けていた姉が帰ってきて……
そんな中でも「ぷりるん。」しか言わない少女がユラキを付きまとってくる。
って感じから始まる。
 
一見ハーレムものみたいだけど、そんな幸せは幻想というか、綱渡りの幸せで、クラスメイトの桃川みうは大雑把に言ってしまえばメンヘラビッチで家庭の不和から誰かと体を重ねないと“愛されている”“愛している”と認識できないくらい追い詰められていて、一度体を重ねてしまったユラキに執着してくるし、姉が帰ってきたことで、実は姉と妹とは血が繋がっていない他人だということを知らされて、仲のよいと思っていたクラスメイトの友人は自分のことを陰口言っていたりで、ユラキの家族だったり、日常は簡単に崩壊していく。ユラキはそれで追い詰められてEDになる。
 
2018年の今読むと、こういうハッピーなキャラ造形にいびつな内面がある、背景がある、というのはまぁ割りかし「見た話だなぁ」と既視感はあるんだけど、実際ユラキが追い詰められて行く過程だとか、最初は幸せそうだった妹との関係が崩壊して、どんどんと『日常』が崩壊していくところだとか、桃川とのズルズルとダメになっていく関係の過程とか、そんな崩壊が少しずつ、完全にではないものの再生して行く過程は読み応えがあった。

 

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

 

 

舞城王太郎から暴力を抜いたような話、と括ってしまうと雑だけど、自分の中ではそんな印象で、そこが面白かった。
 
キャラでいうと桃川が好きで、もーどうしようもないメンヘラなのだけど、僕はそんなメンヘラキャラが好きなので読んでて楽しかった。
それゆえにユラキと最終的に至った結論には優しさがあったし、救いがあったのでメンヘラっぷりにそれなりに感情移入して読んでた僕も合わせて救われたような気分になった。
 
他にもユラキの友人の『陰口もいうし、みてないところでは小馬鹿にするけれど、それはそれとしてユラキに感じている友情自体は本当』みたいな人格のアンバランスさは自分自身共感できるところがあって面白い。綺麗な感情だけじゃ割り切れないんだよね、人間。
 
そんな日常が崩壊したあれこれが、一つずつ、再生して、少しいびつさは残っても再生した後にその最中もユラキの幸福を祈り続けていた人がいる、というのはとても読んでいて僕も幸せな気分になってしまった。
愛は祈りだ。僕は祈る。
そんな感想だった。これは舞城だけど。
 
ED(エンディングではなくてたたない方)が結構書かれているけど、この手のEDものって人間関係を解体して再構築するような話になるのはなんでだろうね。
といっても他に読んだED物って『やわらかい。課長 起田総司』とかぐらいだけど。
しかし「面白かったから貸してやるよ、お前にぴったりだぞ」と言われて進められて読んだはいいけど、いたるところに心当たりがありすぎてどこが『お前にぴったりだぞ』なのか全然わからなかった。どこだ。
 
キャッキャとした日常物の中に仕込んだ毒のある小説、といった感じでした。
 
『萌神』とは別ベクトルで楽しめる人を絞りそうな話だけど面白かったので読んでみるのはどうでしょう。
 
今日はそんなところで。